栃木県/バレーボールスクール/AVANZAR
代表コーチの中田です。
・アバンザールを立ち上げて2年目
・著書「バレーボール令和の教科書1年生」
・バレーボール指導歴10年
・1週間に1冊の読書量
・教育・バレーボール指導について20000時間以上を費やして研究・実践
英語の「coach(コーチ)」という言葉は、ある種の馬車を言い表すための名詞として使われ始めました。
そこから派生した動詞「to coach」の元々の意味は、
「高貴な人を、その人がいる場所から、その人が希望する場所まで運び届けること」でした。
現在でもコーチングはさまざまな分野で行われています。
コーチとの出会いは選手の人生を大きく変えると確信しています。
私がバレーボール指導をするようになってから、10年が経ちました。
いろいろな生徒を指導する中でたくさんの話を聞かせてもらいましたが
一生忘れられないであろうエピソードがいくつもあります。
バレーボールシューズを川に沈めた中学生
「ハイキュー!!」のキャラになりたい
以前指導させていただいていた女の子から聞いた話です。
その生徒をSさんと呼ぶことにしましょう。
話はSさんが小学6年生の頃から始まります。
Sさんは元々漫画が大好きでした。父親の影響だそうです。
小学6年生の春、彼女はバレーボール漫画「ハイキュー!!」と出会います。
高校生のキャラクター達が敵味方関係なくお互いを認め合いながら、知識を高め合いながら、バレーボールのある青春を謳歌する…
そんな姿を見て「ああ、このキャラクター達になりたい」と本気で思うようになりました。
「早く中学生になって、バレーボール部に入って毎日飽きるまでバレーしたいなあ」なんて口にすることも多くあったそうです。
夢あふれる毎日だったことでしょう。
やっと中学生になりバレーボール部に入ってバレー三昧、しかし
「ハイキュー!!」との出会いから約一年、
そんな人生絶頂期のSさんですが、不安なことが一点。
それは、顧問の先生がすぐ怒鳴ること。
ちょっとしたミスでも大きな声で指導され、点数に直接つながるミスなどしようものなら…口もしばらくきいてもらえませんでした。
怒鳴られた直後は心臓がバクバク言って、プレイのことなど全くと言っていいほど考えられませんでした。
「どうしよう、チームから干される…」
そんなことばかりが頭を駆けめぐります。
周りの生徒も顧問の言いなりで、外されるのが怖いから練習にも休まず参加し、試合でもやたらと声を出していたそうです。
大抜擢…
夏の大会の1週間前にさしかかった頃のことです。
レギュラーでサイドのアタッカーをしていた先輩がアタック練習中にケガをしてしまいました。
そして代わりにコートに入るのは…バレーボールを始めて3〜4ヶ月のSさんになりました。まさに大抜擢。
理由は「元気だから」だったそうです。
こうしていとも簡単に試合に出られることになったSさんですが、正直嬉しくありませんでした。
控えの先輩には冷たい目で見られます。
ボールに触る回数が増えたため必然的にミスの量も増えます。そのため顧問にはいつも以上に怒鳴られます。
楽しみたくて始めたバレーボールなのに、いつの間にか
「どうしたら怒られないか」「できるだけボールが自分にとんでこなければいい」
と考えている自分がいました。
大会後、事件発生
大会後の説教で言われたことは簡単に言うと以下でした。(実際には30分ほど指導されていたそうですが)
- おまえのせいで負けた
- なぜ正面にきたボールをレシーブできないのか
- おまえをコートに入れた俺がバカだった
「自分のせいで負けたの」「技術不足」「失望」
こういった言葉が重くのしかかってきます。
技術について今言われてもすぐ改善できることではないし、結果については今更どうこうできるものでもありません。
どうしようもない無力感に、説教されている途中から涙が止まりません。
帰宅したSさんが最初にとった行動、それは
家の近くを流れている川にシューズを流すことでした。
後日談
それ以来、部活は辞めバレーボールからも遠ざかってしまっていたそうです。
「ハイキュー!!」の漫画は読み続けており、純粋に楽しんでバレーボールができる環境を探していてうちのスクールに行き着いたようです。
現在も高校で熱心にバレーボールを続けています。
親に連れていかれたバレーボール教室でどハマり
一方で、コーチとの出会いが子どもを良い方向に導いた、素晴らしいエピソードもあります。
一人大好きゲーム大好き少年Aくん
ある田舎に住んでいる小学4年生のAくんは、一人でゲームをすることが好きで暇さえあればゲームをして過ごしていました。
そんな息子の姿を見た父親は、「高学年になるのに他人とコミュニケーションが取れないと大変だ」と
地域でやっていたバレーボール教室を強く勧めました。
Aくんはゲームをしていたかったものの、父親があんまりうるさかったらしく(笑)、しぶしぶ行くことに。
バレーボールとの出会い
教室当日、コーチはAくんに向かってボールを放り
Aくんはそれをアタックしてコーチに打ち返しました。すると、
コーチは動きを止め、驚いた様子で
「私に吸い込まれるようにボールがとんできた!はじめからそんなことできる選手なかなかいないぞ!ここからさらに上達したらどうなってしまうんだろうなあ?」と声をかけた。ただそれだけです。その日はそれ以上の指導は行いませんでした。
さて、この後Aくんはどうなったでしょうか?
バレーボールに夢中になり、コミュニケーションもバツグンに取れるように
ご想像の通りです。
コーチが何の声をかけずとも黙々とアタック練習に励んだそうです。
メニュー自体は何の変哲もないもの(壁打ちなど)だったそうですが、Aくんの集中力は大好きなゲームに熱中している瞬間と変わらないものであったことでしょう。
彼はバレーボールの魅力にすっかりハマり、試合に出たいと考えるようになりました。
そこで生き方についてのこだわりが生まれ、自分自身を向上させることに力を注いだのです。
- 自分の動きは理にかなっているか
- いつも同じようなフォームで打てているか
- トレーニングの方法は合っているか、効果は出ているか
- そもそも細かいことに気を配れているか(身の回りの整理整頓など)
コミュニケーションの大切さや自分の考えを伝える時のポイントにも気が付き、
今ではコート上での味方への励まし(スポーツ心理学でサイキングアップ&リラクセーションといいます)が彼の武器となっています。
バレーボールで培ったコミュニケーション能力が功を奏してか、日常生活でも会話を楽しめる友達が増えました。
コーチとの出会いがもたらす影響
今まで出会った選手のエピソードの中でも極端な2つの例を紹介しました。
コーチの違いがもたらした結果とも言えるかもしれません。
子どもは皆尊い存在であり、彼らには自分を希望したところまで導いてくれるコーチを選ぶ権利があります。
この記事の読者が良きコーチに出会い、良きスポーツライフを送れますように。